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なぜクリスマスに食べるの?シュトーレンの由来と意味を知れば、味わいがもっと深まる

最終更新日: 2025/11/29

なぜクリスマスに食べるの?シュトーレンの由来と意味を知れば、味わいがもっと深まる

クリスマスを待ちわびる特別な味「シュトーレン」とは?

クリスマスの足音が聞こえてくると、街のパン屋さんやパティスリーの店先に並び始める、粉砂糖で真っ白に化粧をした、ずっしりと重い焼き菓子。それが、ドイツ発祥の伝統的な発酵菓子「シュトーレン」です。

その歴史は古く、クリスマスシーズンには欠かせない特別な存在として、世界中で愛されています。

生地には、ラム酒などの洋酒にじっくりと漬け込まれたドライフルーツや、香ばしいナッツが宝石のように散りばめられています。焼き上がった熱々のうちに溶かしバターをたっぷりと染み込ませ、仕上げに真っ白な粉砂糖で全体を覆うことで、その奥深い味わいと豊かな香りが完成するのです。

一口食べれば、芳醇なスパイスの香りが鼻を抜け、フルーツの凝縮された甘みとナッツの食感が口いっぱいに広がります。そのリッチな味わいは、コーヒーや紅茶はもちろん、体を温めるホットワインとの相性も抜群です。

見た目に隠された神聖な意味

シュトーレンの独特な、こんもりと盛り上がった形。これには、ただのデザインではない、キリスト教との深い繋がりと神聖な意味が込められていることをご存知でしょうか?

この形は、 「純白のおくるみに包まれた幼子イエス・キリスト」 の姿を模していると言われています。中央の盛り上がりがキリストの体を、そして全体を覆う真っ白な粉砂糖が、キリストを優しく包む「おくるみ」を象エン徴しているのです。

単なる美味しいお菓子ではなく、キリストの誕生を祝うクリスマスに捧げる、神聖な祈りが込められたお菓子。この由来を知ると、シュトーレンの一切れが、より一層愛おしく感じられますね。

なぜクリスマスに食べるの?シュトーレンの歴史と由来

では、なぜシュトーレンはクリスマスシーズンに食べられるようになったのでしょうか。その長い歴史を紐解いてみましょう。

質素なパンから贅沢な菓子への進化

シュトーレンの起源は、なんと14世紀のドイツにまで遡ります。驚くことに、生まれた当初のシュトーレンは、今のような華やかで贅沢なお菓子ではありませんでした。

当時、クリスマスの約4週間前は「アドベント」と呼ばれる断食の期間でした。そのため、バターや牛乳といった贅沢品の使用はカトリック教会によって禁じられていたのです。当時のシュトーレンは、小麦粉、酵母、水、油だけで作られた、非常に質素なパンのような食べ物でした。

しかし長い年月を経て、ローマ法王から「バターの使用許可」が出されたことをきっかけに、シュトーレンは大きな変化を遂げます。徐々に砂糖やナッツ、ドライフルーツ、スパイスなどが加えられるようになり、現在のようないくつもの素材が織りなす、複雑で深みのある味わいへと進化していったのです。

クリスマスを心待ちにする「アドベント」の習慣

シュトーレンとクリスマスを結びつける、もう一つの大切な習慣が 「アドベント(Advent)」 です。

「アドベント」とは、クリスマス当日を心待ちにする期間のこと。クリスマスの4週間前の日曜日から始まり、キリストの降誕を待ち望む準備期間とされています。

ドイツの家庭では、このアドベント期間に、シュトーレンを薄くスライスして少しずつ食べるのが伝統的な習わし。「クリスマスまであと何日かな?」とカレンダーを眺めるように、シュトーレンの味わいが日々深まっていくのを楽しみながら、家族や大切な人と共にクリスマスの訪れを祝うのです。とても心温まる、素敵な習慣ですよね。

シュトーレンの美味しい食べ方|熟成を楽しむのが本場流

シュトーレンは、買ってきてすぐに食べるだけではなく、時間の経過と共に変わる「味わいの変化」を楽しむことができる、非常にユニークなお菓子です。ここでは、その魅力を最大限に引き出す食べ方と保存のコツをご紹介します。

「熟成」を味わう!本場ドイツ流の切り方

シュトーレン最大の魅力は、なんといっても**「熟成」**にあります。作られてから時間を置くことで、生地に染み込んだバター、洋酒漬けのフルーツ、そしてスパイスの風味がゆっくりと全体に馴染み、一体感が生まれます。日を追うごとに味わいはまろやかに、そして香りは複雑に深まっていくのです。「今日より明日、明日より明後日」と、美味しさの変化そのものを楽しむのが、シュトーレンの醍醐味と言えるでしょう。

この熟成を最後まで楽しむために、本場ドイツでは食べ方にもちょっとした工夫があります。

  1. 真ん中からスライスする: 端から切るのではなく、まずシュトーレンの中央にナイフを入れます。そこから食べる分だけ、5mm~1cmほどの厚さに薄くスライスします。
  2. 切り口を合わせて保存する: 食べ終わったら、残ったシュトーレンの切り口同士をぴったりと合わせ、空気に触れないようにします。こうすることで、断面からの乾燥を防ぎ、美味しさを長持ちさせることができるのです。

美味しさを長持ちさせる正しい保存方法

シュトーレンの繊細な風味を最後まで楽しむには、正しい保存が不可欠です。少しの手間で美味しさが格段に変わりますので、ぜひ実践してみてください。

  1. ラップでぴったりと包む: まず、シュトーレン全体をラップで隙間なく包みます。乾燥と酸化を防ぐための最も重要なステップです。
  2. アルミホイルでさらに包む: ラップの上から、さらにアルミホイルで覆います。光を遮断することで、バターなどの油脂の風味の劣化を防ぎます。
  3. 涼しい冷暗所で保存する: 保存場所は、暖房の効いていない、涼しくて乾燥した場所(15℃~20℃が理想)を選びましょう。冷蔵庫は生地が硬くなり風味が落ちる原因になるため、基本的には避けるのがベターです。もし室温が高い場合は、野菜室で保管してください。

シュトーレンに合うおすすめの飲み物

シュトーレンの複雑な味わいは、合わせる飲み物によってさらに魅力が引き立ちます。

  • コーヒー: スパイスの風味と相性の良い、少し深煎りのマイルドなコーヒーがおすすめです。
  • 紅茶: アールグレイや、シナモンなどのスパイスが入ったチャイ、フルーツティーなどもよく合います。
  • ワイン: 定番は、体を温めてくれる「グリューワイン(ホットワイン)」。赤ワインの果実味とスパイスが、シュトーレンの風味と見事に調和します。

まとめ:由来を知り、シュトーレンと素敵なクリスマスを

いかがでしたか? シュトーレンが単なる美味しいお菓子ではなく、その形や食べる習慣に、キリストの誕生を祝うための深い意味と長い歴史が込められていることを感じていただけたでしょうか。

こうした背景を知ると、シュトーレンの一切れ一切れが、より特別なものに思えてきますよね。

今年のクリスマスは、ぜひお気に入りのシュトーレンを見つけて、その歴史に思いを馳せながら少しずつ味わってみてください。お気に入りのパン屋さんで探すのも、思い切って手作りに挑戦するのも素敵です。今日よりも明日がもっと美味しくなる楽しみを、大切な人と分かち合いましょう。

シュトーレンと共に、温かく、そして思い出深いクリスマスをお過ごしください。

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